2010年04月05日

マエストロ、それはムリですよ・・・ ~ 飯森範親 + ゲゲゲの女房

“本気”の周りには“応援団”が集まる・・・

書籍情報

「マエストロ、それは、ムリですよ・・・」 -飯森範親と山形交響楽団の挑戦-

ヤマハミュージックメディア
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<本の響き>

「最近の山響が面白い」そんな噂がここ数年クラシックファンの間で広がって
いたらしい。山響とは山形交響楽団のこと。地方の一オーケストラに過ぎなか
った山響が、画期的に変貌したのは、2004年に飯森さんが常任指揮者に就
任してからだった。

それまでは、楽団の高い音楽性にもかかわらず、集客も経営もぎりぎりの状況
で、よくある地方オーケストラの悲哀と苦悩がただよっていた。
しかし、新進気鋭の指揮者、飯森さんがきてからとんでもない変貌を遂げてい
った。

本書は、松井信幸さんの取材記事の形で、山響の変貌ぶりを紹介するドキュメ
ンタリーである。オーケストラの話だから音楽好き向けの本かというと、そう
でもない。ビジネスや生き方にも通じる様々なヒントが隠されている。

楽団員を大切にし、感謝の気持ちでいつも接する飯森さんは、熱い信頼の絆で
結ばれている。飯森さんは、コンサートが終わった後、舞台のそで口で楽団員
たちを「お疲れ様でした」と出迎える。指揮者も重労働で、本番が終われば、
さっさと楽屋に引き上げて、燕尾服を脱ぎ、汗だくになったシャツを着替えた
いところだが、そうはしないで、最後の楽団員が引き上げてくるまで立ち続け
ているのだ。

「音楽家はサービス業である」そんなことを大っぴらに掲げる飯森さんは、次
次と新しい試みを実行していく。プレトーク(プレ・コンサート・トーク)と
いうのもその一つ。コンサートが始まる前に、指揮者が観客にその日の演目の
エピソードや曲のポイントなどをユーモアを交えて話すのである。非常に好評
らしい。

「今は、山形の“東国原”って言われてます(笑)」というくらい、山形や山
響のPRにも奔走する。

山響ファンクラブ「YFC」会長の加藤さんの言葉が、飯森さんを見事に言い
表している

  高い音楽性、明確なビジョン、優れた統率力、類い希なカリスマ性に
  加えて、抜群の金銭感覚と経営能力・・・

後段にある私的インタービューでは、ご両親から受けた「人の悪口はいわない
こと、感謝の気持ちで接すること」なども、読み応え十分。

爽やかな気持ちになれるお勧め本。


<僕の共振>

映画「おくりびと」を見た方は多いことだろう。実はその中に山響と指揮者飯
森さんが登場する。本書を読んで僕はDVDを見直した。うん、このシーンか
・・・と別の感慨が浮かぶ。

そのシーンは、最初台本にはなかった。映画の滝田監督がどうしてもオーケス
トラの演奏シーンが必要だということで、急遽、撮影の話がきたという。
事務局の斉藤さんは、「つぶれるオーケストラ」や「納棺士」といった暗いイ
メージから断るつもりだったという。

そこに指揮者の飯森さんが登場し、ぜひやるべきと主張、しかもその指揮を自
らかって出る。のちにアカデミー賞につながるなどとは知る由もない段階でで
ある。

機を見て、飯森さんが動いたのは、滝田監督の「壬生義士伝」に強いシンパシ
ーを感じていたからという。さまざまなものが横糸縦糸となって繋がっている
のが不思議だ。

すべては、よきこと。感謝の気持ちで物事に対峙する生き方は、とても爽やか
で美しい。

山形に行ってみたいな。

山形新幹線で斉藤泉さんに会えるかもしれないし、
 http://bit.ly/yamagatasinkansen
早川運転手のタクシーに乗れるかもしれないし(あれは岩手中央タクシー?)
 http://www.entre.co.jp/novel/index.html

山形ファンになっちゃったなぁ


オススメ度

★★★★★+本気と共感

読んで欲しい方

・それはムリですをやり遂げたい方
・のためカンタービレが好きな方
・1%の可能性をあきらめない方

Posted by webook at 2010年04月05日 21:56 | TrackBack
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