2004年07月27日

■空中ブランコ(奥田英朗)

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トンデモ精神科医に病みつきになっちゃうかも・・・ 

空中ブランコ
    
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   |著者:奥田英朗
   |文藝春秋|2004年 04月
   |ISBN:4163228705|1,238円 |265P
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 今日は、直木賞受賞作のご紹介。受賞作のほか4作品が収められている。
 いずれも、中年太りした精神科医、伊良部一郎が、ちょっとトンデモな方
 法で人の悩みを解消するお話。

 著者は岐阜県出身の方だ。
 1面で受賞を知らせる記事を掲載した新聞(岐阜新聞)に、自分の本(早
 朝起業)のことも書いてあった(8面)ので、なんだかうれしかった。

 直木賞作品をはじめて読んだのは大学生のころ。渡辺淳一の「光と影」だ
 った。読んだ理由は、短そうだったから(笑)。でもめちゃ面白かった!
 直木賞は基本的に中・短編が多い。だから読みやすいし、ワクワクどきど
 きする作品が多いのがいい。
     http://homepage1.nifty.com/naokiaward/index.htm

 今回の受賞作「空中ブランコ」も56ページのボリュームだ。
 しかし、その中に展開される心理的な葛藤は、読者をすぐに小説の中にひ
 きずりこんでしまう。
 
 内容は、サーカスの花形、空中ブランコの名手(山下公平)がスランプに
 陥る話。人は自分の本当の姿や状況はなかなか認識できないものだ。つい
 人のせいにしたくなる。山下も、空中ブランコでのミスを、相手(キャッ
 チャー)のせいにしていた。
 周りの団員との心理的な軋轢、自身の葛藤、焦り・・・そういうものが、
 じわじわと押し寄せる。読者は、すんごく圧迫される感じを持つ。
 一方で、あけっぴろげでどこかユーモラスな精神科医伊良部の行動は、物
 語に不思議な色合いを織り込んでいく。
 結末は読んでのお楽しみだが、どの作品も爽やかな気分にさせてくれると
 ころがいい。

 受賞作のほか、次の4作品が収録されている。
 とがったもの恐怖症のやくざの話(ハリネズミ)、ルーキー登場で急に野
 球がヘタくそになるプロ野球選手の話(ホットコーナー)、心因性嘔吐症
 に悩む女流作家の話(女流作家)、カツラをはがしたい衝動に悩む大学講
 師(義父のズラ)。どれも、最後はスッキリ爽やか。

 夏休みの午後、読んで欲しい。
 読み終わったあと、遠い空に浮かぶ入道雲がひとの顔に見えるかも・・。    

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 <オススメ度>

   ★★★★★+注射しとく!?

 <読んで欲しい方>
   ・すっきりしたい方
   ・軽い悩みがある方
   ・小説でも読むかって方

Posted by webook at 2004年07月27日 08:23