2004年08月25日

■内側から見た富士通(城繁幸)

fujitsu-jinji.jpg
内部の声を外に出すには勇気がいる     

内側から見た富士通】     
   「成果主義」の崩壊
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   |著者:城繁幸
   |光文社|2004年 07月
   |ISBN:4334933394|952円|235P
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 成果主義とか、目標管理制度とかは、多くの企業で採用されている。
 僕のいる会社でもMBO(Management by Objective) なんてのがある。
 ところで、成果主義を取り入れた企業の多くは、果たしてそれをうまく機
 能させているのだろうか・・・

 本書は、93年に目標管理制度を取り入れた富士通の苦悩を内部(人事部
 に在籍)にいた著者が実情を公開し、成果主義の失敗の要因を分析した本
 である。
 
 内部告発的な様相もあり、すでに退職しているとはいえ、きっと圧力がか
 かったんだろうな・・とよけいな心配をしてしまうほど過激な内容がある。

 そうだ!そうだぁって思う人は、富士通内部にいる人だけでないだろう。
 多くの企業に内在する共通の問題がそこにあるからだ。

 著者は、富士通における目標管理制度の失敗は、次のような要因だと分析。

 * 管理職の目標設定や評価がブラックボックス化のままであり、目標の
   ブレイクダウンが機能していない。
 * ムラ社会の社風が、制度運用をダメにした
 * 評価の不公平感(本社の人事部員はいつもAかSA)がある

 などなど。
 トップの無能ぶり批判や、内部事情の暴露など、かなりアブナイ内容があ
 るが、感情的にはならず冷静に見ているところがいい。

 富士通を不思議な会社とみるか、それとも「うちだって近いものが・・」
 とみるか。単に内部に潜む憤懣を明らかにしただけでない価値がありそう
 な本である。この本の売れ行きがそれを示している。
 掲示板もなかなか華やかだ。
  http://mnfuji2.hp.infoseek.co.jp/ (下のほうにいろいろある)
  http://mnfuji2.hp.infoseek.co.jp/03bfb1_1.htm (アンケート例)

 目標管理制度を作っただけの企業は案外多いらしい。あとはよきに運用し
 てくれモードである。そうなると各部門は自分たちが心地よい運用をはじ
 めるので、制度は空中分解する。ところが、評価だけはつじつまを合わせ
 るために上から締付けがくる。そんな状況ではないだろうか。

 目標設定のプロセスにBSCのコンセプトを取り入れたら・・・とも思っ
 たが、それ以前の課題が多くありそうだ・・・。
 
 他山の石か、自社の石か。
 
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 <オススメ度>

   ★★★★☆+同感

 <読んで欲しい方>
   ・人事部の方
   ・業績評価制度がある会社の方
   ・この目標はなんだぁって思ってる方

Posted by webook at 2004年08月25日 22:44