2006年02月02日

超バカの壁 ~ 養老孟司 + 卵知喜会議

ものの見方、考え方の問題である。

書籍情報

超バカの壁
超バカの壁
posted with amazlet on 06.02.11
養老 孟司
新潮社 (2006/01/14)

本のひらめき

バカの壁シリーズの第3弾である。反日の問題、靖国の問題など時事的なものから、男女、子ども、老人など身の回りのことまでさまざまなことについて、養老さんの思索を語ったものである。

中でも印象的なことは、仕事に対する姿勢の話。
天職とかライフワークとか、そうたやすく見つかるものではない。また、目の前の仕事が些細でつまらぬことに見えることもある。しかし、仕事とはあちこちにあいた穴を埋めるようなもので、それを「本気で」やっていくうちにモノになり、経験になり、やがて何かがみえてくるものだという。

秀吉が出世できたのも、草履取りを「雑用」と思っていい加減にすますのではなく「本気」で取り組んだからこそではないか・・という。著者も助教授時代、「死体の引き取り」をしていたという。“そんなこと助教授んも仕事じゃないよ”と言われても、いやこれも重要な仕事の内だと思って真剣にやったという。そしてそれは大いによい経験になったと。

もう一つは、世の中のことはわからないことも多い。たかが人間が思いついた概念で、それが全てだなどと思い上がるのはよくないというところ。科学的客観性や一元的現実などといった考えを金科玉条にするな・・ということだ。
「わからないことを」知るということもとても意義があるという。そういう、謙虚な思考についていろんな出来事で語られている。

もうひとつ。なぜ女は強いかという「男女の問題」について生物学的な論考が面白い。
身体的には人間は、女が基本形で、Y染色体の働きでホルモンが作用し、男性は女性をいじって作り上げたものだという。
免疫学者、多田富雄さんは『女は実体だが、男は現象である』と言ったそうである。竹内久美子女史とも通じるものがあって面白い。


僕の思いつき

ものの見方にはいろいろある。養老さんも自分の考えが正しくて、それを理解しないのはバカだという思考回路ではない。考えが異なるのは仕方のないことだ・・・というゆるい考え方がある。AかBかの二元論ではなく、その中間もありえるのだという鷹揚さや、今人間が認識していることが決して全てではないという謙虚さが、かえって思考の骨をもっているような気がする。日本的だ。

こういう思考回路は、年をとるにつれてできるような気もする。
年をとるのも悪くない・・・なんて思った。



オススメ度

★★★★☆+鷹揚と謙虚

読んで欲しい方

・ゆるい思考が好きな方
・バカに興味ある方
・世の中の疑問を考えてみたい方

Posted by webook at 2006年02月02日 23:52 | TrackBack