1997年07月25日

【私は金正日の踊り子だった】上/下..申英姫(シン ヨンヒ)97.7.25...☆☆☆☆

【私は金正日の踊り子だった】上/下
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申英姫(シン ヨンヒ)
1961年 北朝鮮生まれ.79年平城芸術専門学校を
卒業しピパダ歌劇団に入る.81-89年まで「万寿台
芸術団」花形スター.
86年 党財政経理部長と結婚.
95年12月 韓国へ亡命.子供二人.
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徳間書店 1500円
97.4.30 第1刷
97.7.10 第6刷
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末期症状の社会主義国で、少し美貌と踊りの才能と運に恵まれた
著者が、その生い立ちと金正日およびその側近達の秘密のベール
のなかにいた時の様子、亡命までのスリリングな模様などを
綴った本です.金正日(キムジョンイル)を頂点とする権力の内側
を"踊り子"という視点からかいま見る事ができる貴重な本です.

北朝鮮の南浦で生まれた少女 - シン ヨンヒ :著者 -は 踊ること
が好きで やがて 国営舞踏団とも言うべきピパタ歌劇団にはいる.
そして、ひょんなきっかけで 金正日直属(ということは 国が 一部
権力層のためにやしなっている)の舞踏団 喜び組 (わあ なんて名前
でしょう!) に入り、金正日や国の中枢とも言える側近達の秘密の
パーティで踊ることになります.ここは 結構やらしい場面が登場
します.

貧困に喘ぐ国民をよそに 権力者層は秘密のベール(と言っても国民
に対してであり 、国外では こんな本がでてばれている)の中で
あられもないことをしているようです.(まあどこの国でもおんなじ
でしょうか)

舞踏団は、金正日の気まぐれな言葉に翻弄され、ちょっと失敗でも
すれば 即左遷(場合によっては どこかへ葬られる) ような状態で
全ては 金正日様の教示に従わなければならない.

著者は その後 知り合った夫が 権力者に近いところにいたことと
から "工作" と言う袖の下などで 社会主義の国の中では珍しく
ラッキーな生活を送りますが、その夫が 西の世界に目を開いていた
ことから、韓国への亡命を果たします.
亡命時の模様は 人質にとられている幼い子供を取り返すために
金正日の実妹をお金を送ったり、ひそかに派遣された監視工作員と
の対応など サスペンス映画もどきのところがあります.

以前 【北朝鮮 絶望収容所】 では、最下級のクラスとして虐げられ
た人の回りからの北朝鮮探検でしたが、この本は 金正日 (キムジョン
イル) の権力中枢のすぐちかいところからの探検です.

遠くて近い、末期症状の社会主義国を 踊り子 という目から見た
貴重な本といえるでしょう.
なかにある いくつかの写真も 私にはめずらしい印象がしました.

北朝鮮に興味のあるかた
おすすめです.
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おすすめ度
☆☆☆☆

真之助

Posted by webook at 1997年07月25日 16:49