2009年04月27日

戦略キャンプ ~ 森田 元 ほか + 地活な人々

ギリギリの議論の先にあるものは・・・・

書籍情報

戦略キャンプ―2泊3日で最強の戦略と実行チームをつくる
森田 元 田中 宏明 佐藤 俊行
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 6959


本のひらめき

ひさびさに本格的なビジネス書を読んだ。本書は、企業戦略を実行可能なもの
にするための「合宿経営」について書かれた本である。

多くの企業が抱える根深い問題をどう解決できるか・・著者の経験と洞察をも
とにしたユニークで実践的ヒントがいっぱいある。

ストーリー仕立の構成と、マインドマップによるリアルタイム議事録が、物語
をとてもリアルにし、かつ面白くしている。

日常で経験する会議やミィーティングでの本音と建前のせめぎ合いや、部分最
適か全体最適かといった微妙な矛盾の情景と心理描写が見事だ。あるある、そ
ういう時って・・・と思いながら読める。


本書の物語は、創業50周年を迎えるアイバ包装という中堅企業を舞台にする。
中期計画で謳われた「事業のサービス化」と「海外事業の立て直し」は、言葉
ばかりで目標には程遠く及ばず・・・が現実だった。危機感をもった社長は、
営業企画部長の田尻に主要な部長を集めた合宿を行い、打開策を策定するよう
指示をだす。

それまでいくつかの難問を合宿で解決してきた田尻だが、今回のテーマは重す
ぎる課題だった。「やるしかない」と覚悟を決めた田尻を中心に、問題解決の
合宿が始まる・・・

部門を背負う部長たち、様々なキャラの人たちの格闘は、思うようには進まな
い。堂々めぐりや、禅問答など微妙な空気も流れるのだが、あるときから裃を
脱ぎ捨てて、本音を出さざる得ない状況になる。物語では、登場人物の心理描
写が丹念に進められていく。(まるで会議に参加しているような雰囲気は見事
だ)


合宿経営は、開催するほうも参加するほうもそれなりの覚悟がいる。本音と建
前のうごめく会議を、ほんとうに意味あるものにするには、理論と感情の両面
の納得できる合意が必要だ。合宿経営は、そういう場を意図的に生み出す素晴
らしいしかけ、ではないだろうか。
ギリギリで成立する合意こそ、戦略をやり遂げる力を生むのである。

日常の会社(会議室)を離れ、雰囲気をかえて行う合宿には、独特の空気が流
れる。建前や立場を超えた本音のぶつかり合い、夜の部での融合、・・・さま
ざまな場面を経て、ひとつの方向を見出すプロセスこそ、戦略キャンプの醍醐
味かもしれない。

物語と解説がほどよくマッチした、すばらしい経営の書、といえる。
とってもお勧め!


僕の思いつき

実は、著者のお一人、森田さんは、会社の大先輩である。長年のサラリーマン
生活の中でも、この人は素晴らしいリーダーだと思えた数少ない方である。
森田さんは、常々合宿をやっていろんな問題を解決してきた。
その経験と知恵が、凝縮された本なのである。

物語に登場するシーンには、実は森田さんといっしょに僕も味わったことのあ
るような場面があったりする。(多くの読者も共感できるシーンが多いと思う)
森田さんの中で合宿経営というマネジメントのスタイルが昇華されていく過程
に、わずかながら僕もいたというのは、なんだか楽しい。


そこで思うことは、現在、マネジメントのポジションにある方は、ぜひ、自分
のやってきたことや、やろうとしていること(仮設検証)を、将来こうした本
にすることを考えてみてほしい・・ということだ。

こんなこと・・・・当たり前すぎて・・ということこそ、お宝になる可能性が
ある。経営でも人事でも総務でも、あらゆるところに、それ(ネタ)はある。

愚直に、とことんやってきたこと・・・それは、まさにビジネス書のネタその
ものだから・・・。



オススメ度

★★★★★+理論と感情

読んで欲しい方

・矛盾に満ちた問題を解決したい方
・悩める経営者の方
・物語から何かを感じたい方

Posted by webook at 15:09 | Comments (0) | TrackBack

2009年04月20日

幕末裏返史 ~ 清水義範 + いつだって、うまくいく!

その時、歴史は変わった?


書籍情報

幕末裏返史
幕末裏返史
posted with amazlet at 09.04.20
清水 義範
集英社
売り上げランキング: 248967


本のひらめき

「大河ドラマ」より面白い。「そのとき歴史は変わった」より砕けた楽しさが
ある。ジョークと史実の微妙な間合いがあるこの作品は、今までに味わったこ
とのない感覚を覚える。

黒船来航、日米通商条約締結、幕末の動乱、明治の始まり・・・そんな歴史の
流れの中に、一人のフランス人、アナトール・シオン(架空の人物)が登場す
る。幕末の歴史の流れをこのフランス人が少しだけ変えてしまう物語。

ホントのようなウソのような・・・まるで、実際の史実がそうだったかのよう
な感覚を覚えるのが楽しい。

アナトール・シオンは、ゴールドラッシュのアメリカで、中浜万次郎(ジョン
万次郎)と出会う。物語はそんなシーンから始まる。

シオンは、親日のフランス人で日本語が堪能。やがて、運命の糸は彼を幕末の
日本に連れていく。そこで彼は、さまざまな人物と遭遇し、日本の歴史を変え
ていくのである。中浜万次郎、勝海舟、坂本竜馬、西郷隆盛、吉田松陰・・・
など歴史上の人物が個性豊かに描かれ、シオンとの交流を深めていく。

日米通商条約は、シオンのお蔭で不平等でなくなり、吉田松陰は投獄から助け
出され、明治の初めに日本の大統領選挙がおこなわれる・・・といった奇想天
外が展開は、えっ、マジかよ・・・と思いつつも、面白くてたまらない。

5分でも隙間時間があれば、ページをめくりたくなる・・そんな中毒性の面白
さがある。

歴史の授業は、史実を覚えるだけのモノクロなつまらなさがあったけれど、本
書のように、縦横の糸が繋がり、人の生きざまが織りなされた読み物は、実に
楽しい。

パスティーシュ(模倣品)というジャンルを、味わってみよう。


僕の思いつき

小学校のころ、夏休みの宿題で「渋垣退助」という物語を書いて提出したこと
があった。「板垣死すとも自由は死せず」(板垣退助)の話を知って、それを
もじって創ったものだった。田舎の穴場(子どもにとって)などを織り込んだ
大作(笑)だった。

歴史の知識、日頃会社で見聞きしている状況、知り合いの行動癖・・・など、
いろんなものを動員して、ちょっとしたストーリーを構成してみるのは楽しい。

そこに、人生のメッセージや思いなどをこめられたら、立派な小説になる。

なんか創造意欲を掻き立てられる刺激が、本書にはあるなぁー。

あなたも、どう? 人生はネタに満ち満ちている。



オススメ度

★★★★★+歴史は変わった!

読んで欲しい方

・ジョークが好きな方
・幕末、明治の歴史が好きな方
・清水義典の世界を感じたい方

Posted by webook at 12:00 | Comments (0) | TrackBack

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