2009年10月26日

顧客の信頼を勝ちとる18の法則 ~ 山岡隆志 + スリルザワールド

   マーケティング2.0 キーワードは、ドボカシー

書籍情報

顧客の信頼を勝ちとる18の法則-アドボカシー・マーケティング-
山岡 隆志
日本経済新聞出版社
売り上げランキング: 2452

本のひらめき

WEB2.0など、インターネットの進化は生活やビジネスなど様々なところ
に大きな変化を与え続けている。マーケティングの世界もしかり。
本書は、4Pに代表される企業主導の時代から、顧客主導の時代にパラダイム
シフトする中で、企業が目指すべきマーケティングの方向性を「アドボカシー
(advocacy)」という新たな概念で説明するものである。

まだ耳慣れないこの言葉( advocacy)は、支援、擁護、代弁といった意味があ
る。「アドボカシー・マーケティング」とは、「徹底的に顧客の立場に立って
物事を考え実行する信頼ベースのマーケティング」と定義されている。

こうした新しい概念が登場した背景には、ネット時代になり企業より顧客が力
をもつようになってきた事情がある。20世紀後半のテレビのCMなど「プッ
シュプル」戦略から「リレーションシップ」を経て、今は「アドボカシー」の
時代になるつつあるという。

これをロイアルティのレベル進化で表現すると

  見込み客→ 顧客→ 得意客 →支持者 →擁護者
Prospect Customer Client supporter Adovocate

という階段になる。それを実現するために企業がとるべき方法として18の法
則が紹介されいてる。

顧客に焦点をあわせるのではなく顧客の立場で見ること、ありのままを伝える
透明性の法則、TQMを追求すること、売るのではなくさりげない関係を築く
こと・・・など18の法則がある。これらはは、いわゆるマーケティングとい
う狭義の世界にとどまらない全社的なテーマとして捉える必要がある。

こうした理論的な展開に、非常に豊富な事例があるのがうれしい。たとえば、
MKタクシー、宅急便のヤマト、ジョンソン&ジョンソン、モスバーガー、サ
ウスウエスト航空、信越工業、GE、ネスカフェなどなど。豊富な事例の中で
へぇーと感心しながら、アドボカシーの理論になるほど、と納得できる。

マーケティング部門だけでなく、さまざまな立場の企業人に読んでほしい一冊。

<僕の思いつき>

たくさんの事例の中で、印象的だったのがMKタクシー。東京にいたときは、
MKタクシーを選んで乗っていた。実に気持ちいいのである。ニュースなどで
も紹介されているのでご存じの方も多いと思う。ドライバーが車から降りてド
アを開ける、きちんと挨拶する、室内温度がいいか聞いてくれる、もちろん禁
煙である。MKタクシーは、タクシー会社に対する固定概念を覆してくれてい
る。採用は、業界経験よりその人がもつ資質を厳しく見るという。技術ややり
方は教育や研修でなんとでもなるが、資質(笑顔やホスピタリティ)は、なか
なかそうはいかないからである。

ドライバーの社会的地位向上も図っている。制服も森英江さんを4年もかかっ
て口説きデザインしてもらったり、ヘルパーや観光ドライバーなどの資格をと
らせたり、英国留学制度もあるという。

過去、何十年か・・・タクシ―運転手という職業に持っていた固定観念を打ち
破るなんて、とっても素敵だ。はじめは、まさにMosoだったに違いない。

このMKからさらに進化したicinqs (アイサンクス)というリムジン企業もあ
る。 http://www.icinqs.com/ こちらも素晴らしい。

一冊の本から、素晴らしい企業を知るというのも、実に楽しい出会いである。


オススメ度

★★★★★+顧客と一緒

読んで欲しい方

・お客さまと一緒に考えたい方
・マーケティング部門の方
・BtoFを感じたい方

Posted by webook at 10:55 | Comments (0) | TrackBack

2009年10月19日

つるの式伝える技術新常識 ~ 鶴野充 + あり方の教科書?

非常識は面白い!

書籍情報

つるの式「伝える技術」新常識
鶴野 充茂
小学館
売り上げランキング: 106748


本のひらめき

逆説的発想。つまり、普通はこうだと皆が思っていることの逆張り発想をする
ことだ。僕はそういうのが好きである。

鶴野さんの新著は、そんな逆説的展開の中で、コミュニケーションのコツを学
べる楽しさがいっぱいある。つるの式、新常識は楽しい。

たとえばこんな感じ:

 通説:名刺は初対面の人に渡すもの。一度渡したことがある相手に再度渡す
    と失礼にあたる。(僕も、ずっとそう思っていた)

 新常識:相手に名刺を渡すのは、会話のきっかけにするため。改めて名刺を
    渡して、記憶を新たにしてもらったっていいじゃないですか。
    大切なのは、過去に名刺を渡したかどうかではなくて、今、その場で
    名刺を見てもらいながら、会話をすることです。

確かに、「えーっと顔は覚えてるけど誰だっけ?」という相手(自分)のスト
レスを軽減できるし、確実に自分の名前を確認してもらえる。へんな常識にと
らわれる必要はないのである。

また、こんなのもある。

 通説:興味を持ってもらうには、自分の持ち駒を多く話して、会話の糸口を
    多数示したい。

 新常識:インパクト重視で、特徴的な部分を一つだけ話す。(抽出的表現)
    とってもユニークな例があるので印用しとこう、

    「どんなお仕事をされてるんですか?」
    「おじさん向けに保母さんをやってます」
    「え、何ですか、それ!」
    「わがままなおじさんたちが機嫌よく働けるように、あらゆることを
     する保母さんみたいな仕事です」
  ・・「つまりフツーの事務です。」

お仕事は?の問いかけに「オフィスの事務です」だけでは、なかなか後が続か
ない。しかし、これなら、えっ、という驚きと、お洒落なウィットがある。
実際、鶴野さんは、このあと「おじさんたちを機嫌よく働かせるコツ」をたっ
ぷり聞かせてもらったという。

面接、自己紹介、上司部下の会話、プレゼン・・・様々なコミュニケーション
の場面にある思い込みを雲を晴らし、なるほどーという新常識がいっぱい。

 倫理的に口説くか、思いで動かすか、
 余計なひと言でメールに個性、
 問題点と解決策はセットで提示、

などなど、試したくなるヒントがいっぱい。ビジネスパーソンにお勧め!


僕の思いつき

僕が、速、実行に移したいと思った素敵な内容をメモっておこう。

*メールの署名

メールの署名は、僕もかなりこだわりがある。できるだけ相手のことを考えて
つけるように心がけたい。たとえば、親しくなるとついつい署名をつけずに送
信することがある。

すると何がおきるかというと、急に電話したくなったときに、電話番号を調べ
るためにかなり苦労する。(名刺を探しまくる、過去メールを漁る・・・)
電話、メール、住所、名前フルネームは、あったほうがいいねー。
つまり、電子署名=名刺 と思っているといい。

*講演での言い訳

講演やレクチャーをする人の多くは、同じ話をなんどもすることになる。
そのたび、心のなかで、ついいいわけ(別のところでもお話したのですが、と
か、一部の方はすでにご存じかもしれませんが)を言いたくなる。同感。

しかし、それは我慢したほうがいいらしい。なぜなら、目の前の人に「新しい
話ではない」なんて伝える必要はないし、むしろ、「今、ここにいるあなたの
ために一生懸命準備して、お話しています」とう姿勢で臨む方がいいという。
これは、とっても新鮮! さっそく次会に活用させていただこう。

鶴野さんの講演を聞いてみたいねー。



オススメ度

★★★★★+逆説新常識

読んで欲しい方

・逆張り思考で考えたい方
・何かを伝える立場の方
・会話の楽しさを感じたい方

Posted by webook at 13:55 | Comments (0) | TrackBack

2009年10月12日

朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力 ~ 永井孝尚 + 露木さんと田坂さん

対物語でわくわく、解説でふむふむ・・・

書籍情報


本のひらめき

本書は、物語で読むマーケティング入門の書である。入門とはいえ、しっかり
と骨太なエッセンスが学べるのがうれしい。本書は、とくに法人向けのマーケ
ティングをテーマにしたもので、多くのマーケティング書籍が消費者向けであ
る中で、特異なポジションにあるものといえる。
さらに、物語仕掛けになっているため、とても面白く読めるのがいい。

著者は、IBMのマーケティングマネージャーとして活躍中であり、実践と理
論の両面から語れる強みは、物語をより面白くしている。

物語の舞台は、中堅会計ソフトの会社。主人公は、入社後10年ほどセールス
を経験し、最近商品企画部に異動したばかりの宮前久美。大手企業でマーケテ
ィングを担当し、退職後大学院でマーケティングを教える叔父の与田誠が久美
のメンターとして登場する。
朝、会社が始まる前のカフェーでうける与田からのコーチングは、久美を一人
前のマーケターに成長させていく。

事業ドメインの定義、競合比較と市場分析、顧客満足のとらえ方、顧客価値の
創造、プロダクトセリングとバリューセリングなど・・・マーケティングの基
本が、物語を読み進む中で理解できるのがいい。

3C、5つの力、バリュープロポジションなどを、単に教科書的に解説されて
もちっとも面白くないが、本書のような物語の中で体験的に説明されると、妙
に腑に落ちる。

とても読みやすく、また、ためになるマーケティング読本。超おすすめ!


僕の思いつき

久美と与田の間でかわされる会話にいくつかのマーケティングレッスンがあり
その中で僕の興味をくすぐったのを紹介しておこう。

家電量販店に押され気味な町の電気屋さんが、「フットワークのいいアフター
サービスを売りに、団塊世代の富裕層を狙って成功している」事例が登場する。
バリュ-プロポジションの解説事例だ。

バリュープロポジションとは
 1)顧客が望んでいて
 2)自社が提供でき
 3)競合他社が提供できない価値

のことである。

また、キシリトールガムが、虫歯予防のガムとして認知されるプロセスも面白
い。

 虫歯を治すこと・・というサービス中心で考えていた歯医者さんの価値を
 健康な歯を維持すること、というように顧客中心に変えた

 それにより、キシリトールが虫歯予防のガムとしてのポジションを獲得し、
 また、歯医者さんも虫歯治療以外の残り9割を顧客にできた・・・、という
 わけである。

世の中の現象をこんな風に眺めるのは楽しい。

マーケティング的目線でみる楽しさを本書は教えてくれるだろう。


オススメ度

★★★★★+理論と実践

読んで欲しい方

・マーケティングに興味ある方
・商品開発の部署の方
・世の中を面白く感じたい方

Posted by webook at 13:58 | Comments (0) | TrackBack

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